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小声で挨拶

詩を書いている上田丘と申します。考えに浮かんだ事を書いて行きます。

第三の性

 日本のニュースではそれ程大きく報道されていないと思うが、合衆国では最近LGBTQに関連して、世の中に大きな動きがあった。LGBTQという言葉自体まだ日本で余り広まってないが、Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, and Queerの略で、簡単に言えば同性愛者の人達の人権について、法整備が進んだのだ。昔からアメリカ合衆国と言えば、ネオコン創造論から想起させられる、非常に保守的な面が大きい国というイメージで、その国でこういった問題について最近見られた大きな進展が、これだけスムーズにあったことは、喜んで見ていたが、意外でもあった。

http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/16/supreme-court-gay-marriage_n_6491140.html

こういった一連のニュースに触れていて、The Smithsというバンドを思い出して、最近聞いていた。私が高校生の頃聞いて、当時良いと思った曲も幾つかあったが、何かもう一つよく分からない、というのが率直な感想で、直に聞かなくなってしまった。最近また聞いてみようと思ったのは、ボーカルのモリッシーについて、その頃同性愛者ではないかと言われている、と聞いていたからだ。

 男女の違いについての本を読んでいて知ったが、現在、男性の性同一性障害の原因は、胎児の時、通常胎児は母体から男性ホルモンを浴びるが、何らかの原因でこれ(テストステロンシャワーというらしい)を浴びなかった事だというのが、主流の説とのことだ。これを聞くと、同性愛という物は何でもない事のように思える。原因や事実が分かるという事は、本当に重要だ。私が中高生の頃、同性愛については、「恐怖」を感じていた。どういう事かと言うと、今考えると、多分こういうことなんだろうと思う。二十何年前、今よりももっと、ゲイの人達に世間は過酷だった。高校生の頃の私は、自分をストレートだと思っていたし、実際そうだったのだが、何かのはずみでゲイになってしまうのでは、という事に、かなりの恐怖を抱いていた。また、何かのはずみでそうなった場合、自分もテレビに出ていた同性愛者の人達と同じ扱いを受けるかも知れない事にも、同時にそれなりの恐怖を抱いていたのだ。

 そんな訳でザ・スミスを聞いてみたのだけれど、ただ、そうは言っても、それ程大層な考えを持って聞いた訳ではなかった。そして、聞いてみた所、どうも昔聞いた『The Queen Is Dead』は、ザ・スミスの中でもかなり良いアルバムだった様で、今聞いても、このアルバムはとても良かった。簡単に言えば、孤独、絶望、ニヒリズムといった所がとても良かった。モリッシーのセクシャリズムが何か、という事以前に、素晴らしいアルバムなのは間違いない。

 ここで、LGBTQの話になるが、初め私はモリッシーを普通のおっちゃんと認識して聞き始めて、大変感激した。感激して何度も聞いている内に、徐々に、何か私が前提とする認識とは違う感触を感じ始めた。そこで初めて、モリッシーセクシャリティ(性に関連する指向の総称)について納得した。モリッシーは、自身のセクシャリティについて匂わすだけで明言して来なかったそうだが、多分それは、自分にとっては当たり前の事だから、敢えて特別に明言するのにはあたらなかったのだろう。例えば、私だって、「君は女が好きなの?」などと改まって聞かれたら、相手の意図を疑うだろう。モリッシーの作品に感じた孤独や絶望と、本人のセクシャリティとは因果関係があるとは言わないが、切っても切り離せない物ではあるだろう。例えば、

So I broke into the Palace

With a sponge and a rusty spanner

She said: "Eh, I know you, and you cannot sing"

I said: "that's nothing - you should hear me play piano"

そして私は宮殿に押し入った

スポンジと錆び付いたスパナを手に持って

彼女は言った 「や、そなたは知っているぞ、ここで歌ってはならぬ」

私は言った 「そんなのは何でもないさー私のピアノを聞かないといけないがね」

(訳は筆者)

という歌詞だけれど、私は初めこの詞について、何となく「線が細い男性が書いた詞という感じだなぁ」と思ったのだけれど、何度か聞く内に、これはそうではなく、LGBTQの人の感触なのだと分かってきた。ひょろひょろした青年の歌詞ではなく、これはこれでかなり攻撃的な歌詞なのだ。ジョニー・ロットンの方が先駆だったのはあり、歌詞の切り口も若干違うけれど、この歌はピストルズの”God Save the Queen”と比べても、なかなか見劣りしない。他にも、”Cemetary Gates”も特に良かった。これは、詩作の辛さも主題の一つだなぁ、と思う。

 それで、今私はモリッシーについてどう思っているかと言うと、良いミュージシャンという以外で、モリッシーの事を考えると、マツコデラックスさんも思い出したりしている。The Smithsの作品をちゃんと聞けば、別に突飛ではないと思うがどうだろう?今後は、男性と、女性と、そうではない第三の性も、世の中で徐々に意識される様になるのではないかと思う。