小声で挨拶

詩を書いている上田丘と申します。考えに浮かんだ事を書いて行きます。

鈴本演芸場二月下席夜の部 2017年2月22日

 出張帰り、丁度良い時間だったので、鈴本に行く。十八時位に入ると、古今亭志ん陽がやっていた。

 

古今亭志ん陽 壺算

 大きな体で、良く通る声の噺家で、本人が気が付かない所で人の好さが出て、人から好かれる人が偶にいるが、そんな感じの噺家さんだと思った。噺の雰囲気が良く出ていた。噛む事も多かった気がするが、それも愛嬌という事で良いのではないだろうか。

 

春風亭一朝 たいこ腹

 志ん陽と対照的で、演技をしてやる噺家だと感じた。その演技にこちらが入り込んだら、捻くれた所がない笑いで、その後ずっと面白かった。

 

ホームラン 漫才

 日常から切り取ったネタで、ただどこまでが本当でどこからが作り話かが良く分からなくて、そこがシュールな感じもする。勘太郎が畳み掛ける間にたにしで抜いた感じの笑いを挟んでいた。ワンダーコアスマート。

 

入船亭扇遊 棒鱈

 噺をしているのを見ているだけで良い感じ。とても粋な噺家だと思う。

 

蜃気楼龍玉 鹿政談

 語る芸という感じで、この人情噺と合っていて、説得力がある。

 

林家楽一 紙切り

 紙切りは、寄席囃がトントンと鳴って、チョキチョキ切っている間にちょっと気が利いた話で笑わせてくれる所が好きだが、この芸人さんは実直そうな話で笑わせてくれて、観客が親しみ易く感じられる。

 

春風亭正朝 紙入れ

 芸風が派手で、初めはテレビ受けしそうな感じだと思って聴いていた。その内に、実は噺に出て来る人物をとても良く演じていると思った。特に女将さんのしたたかな感じがよく演じられていた。もしかするとだけど、普通の演技も上手いかも知れないなあ、とも思った。この「紙入れ」という噺については、風呂敷の逆バージョンの噺だなあ、と思って聴いた。

 

柳家小菊 粋曲

 一つ一つの曲の解釈が新鮮に感じた。演奏、唄ももっと聴きたいと思う。

 

林家彦いち 新作落語

 優しい笑いなのだと感じた。女子高に招かれて落語をやりに行ったら、よく高座で「待ってました」とか「たっぷり」とか言う掛け声があるが、それと全く同じタイミングで、一番前の子が「きもーい」と言った、という様なマクラがあったが、これも(多分こんな風な事が実際に有って、決して内心で呆れたり怒ったりせずに笑いに変えてこの話になってるんだろうな)という様な事が聴いていてよく感じられた。この部分が一つ。もう一つが、学校の怪談クラブが主題の怪談噺の新作落語なのだが、所々である種の「型」に昇華されているのを感じる事が出来て、その感じが出て来た瞬間は正に創作の現場、瞬間に立ち会っているのを感じて、感動した。ちゃんと修行をした噺家の肉体を通じるからこそこういった事が出来る筈で、これは新作落語の醍醐味だろうが、持ち味の優しい笑いと合わさって、とても良い味になっていた。やはりトリの噺は、時間が長い事もあるが、力が入っている。

 

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